コンテナハウス_バイブル_007_意匠論_専門家向

なぜにコンテナの姿をした箱にこだわるのか、どこにその意味はあるのか。

一般の方のみならず、専門家の方もお客様に言われて「コンテナが使えないかな」と考え、色々調べたあげく「なんだ、日本じゃまず使えないな」という事になる。一般の方々が「コンテナに興味を持つポイント」は下記のポイントです。

1.安そう
2.めっちゃ安そう
3.とんでもなく安そう
4.すんごい安そう、だって1台20万なんて書いてある。
5.やっぱ安そう、なんとかならないの?
6.なんかその物流感がアヤシクて好き
7.インダストリアル感が無機的で好き
8.鉄の箱の感覚が「ロック感」があって好き
9.この箱に住めるならその「ヤサグレ感」がたまらない
10.よく見てみると「インダストリアルな生産の美学を感じる」ので好き

是非10番で行きたいものですが、我々はそう思っていますが、もう一つ大きな理由をわたくしどもは持っています。その理由はあとで明かしましょう。

とりあえずISOコンテナは普通建築には使えないのですが、あなたが何か特殊な能力を使って、輸送用ISOコンテナで建築が作れるとしましょう。輸送用ISOコンテナの新品の工場出し価格を、ほんの4台しか買わない時の価格をお教えしましょう。中国の工場渡しで20FEET normal hightのコンテナが日本円で45万円/台くらいです。(普通は数千台のロットで取引されていますからそんな時の価格は30万円台です)中国の工場出し価格ですから、日本の港に持って行ってもらう為には、両国を通関させて、港で引き取り、持っていきたいところに持って行って、ラフタレーンクレーンを呼んでコンテナトレーラーから降ろさなくてはなりません。あなたが置きたいところ(千葉県一宮町ということにしましょう)に置かれた時のたったの4台のコンテナはそれらの諸経費を4台の平均値にした時、諸経費は1台当たり21万円から25万円の間くらいです。コンテナ代と合わせると45+25=70万円/台です(しかもノーマルの背の低いコンテナです)。

1台20万円という話はもうすでに吹っ飛んでいます(どこでなんの用途に使ったかわからないコンテナですけどね)。

それにしても、どちらにしろ建築には使えないのだから意味のない計算でしたが、実は意味があって計算しました。これを私共が作っている「建築用のコンテナ」だった時ににどの程度の金額で手に入るでしょう。実はただの構造体だけなら千葉県一宮町に持ってきた時に100万円/台をちょっと超えるくらいです。30余万円の差という事ですね。ま、ISOコンテナに比べたらやっぱ高いのは高いですけど、使えないものと比べても仕方ありません。実はISOコンテナをJIS鋼材で補強してなんとか使えるようにすることは可能です。そして窓をつけたり、ドアをつけるための開口部を開けたりの改造を加えると、改造費は40万から50万というような数字になります。

はい決着はつきましたね。上記建築用コンテナの場合、窓の開口部やドアの開口部は最初かから作りますから別の料金なしで上記価格です。ISOコンテナを改造してなんとか使おうという方が経済的には変わらないのです。でもね、あなたが「使わなくなった中古のコンテナが捨てられるのは地球環境のためによくないので是非改造して使いたい」という事であればわたくしどもはそれを止めは致しません。

さて余談をもうちょっとだけ

我が社の仕事の主流ではないのですが「読者がとても頻繁にアプローチする記事」があります。あるいは「キーワードとしてよく検索される語彙」があります。それは、「ガレージのDIY」と「小屋のDIY」です。「DIY」という部分です。そしてその事は「コンテナハウス」では比較的実現性、リアリティのあるテーマなのです。DIYのポイントは「安く作れる可能性がある」事と、ウデに自信があるので、家くらい自分で作りたい。という事でしょう。建築という世界は「職人さんたちの労働力のコスト比率が結構高い」ので、それをあなたがやれるのなら、そこを自分の労働力で代替するなら、見えがかりの「超コストダウン」は出来る事は間違いないのです。(作業は消えるわけではありません)

なので、その自作キットの開発を進めています。というか販売を始めました。カタログは日々更新していきます。

逆に言うと「誰にでも出来るわけではない」と言う事でもあります。なので、それを販売するなら、いざという時の「ヘルプシステム」も考えておかねばならないかなとも思ったりします。でもそれには「お手伝いの作業コスト」が発生するので、そんなに安く作りたい人が「ネを上げた時に」そんな、人に頼む予算が残っているかはアヤシイと言うリスクヘッジもしなくてはなりません(爆)。

さて我々がコンテナ建築をスタートさせる前までは、コンテナを使った建築の世界は「中古のコンテナのリユース」を行った小さな世界でした。よその写真を掲載するわけには行かないので載せませんが、こきたない中古のコンテナで「事務所に使えます」とか、「倉庫に使えます」とか言う事で確かに50万円とか100万円とかで売ってました。建築業界の方ではないのでただ売るだけです(爆)。それをどこかに置いて建築物として使い始めたらすでに「不法建築」ですね。まあ、そんなことには興味は無いので続けます。

私どもが最初に作った歴史的遵法コンテナ建築は下に掲載したものです。
まだ結構模索しながら勇気あるクライアントの発注で出来ました。千葉のパルシステムの「事務所&色々な施設の複合体」です。館山にあります。外壁側で断熱をした「外断熱型」で外見はコンテナに見えませんが、内部はコルゲートパネルをそのまま内装に使っています。設置から完成まで2週間でしたから当時画期的でした。

その次に設計したものがこの「古宇利島の狂人」のハウススタジオでした。

これらの仕事をしている間、個々の仕事の作品性は考えてデザインしているものの、私たちには明確な目標が出来始めました。

届きそうな「夢」の話が生まれたのです。

目指すところはWORLD_WIDEなオープン部品としての建築コンテナ。しかもSYSTEM_ARCHITECTUREレベルです。

WORLD_WIDEものがたりが始まったのです。

あるところに、6.058M X 2.438M X 2.896Mのフレームがありました。「これはもしかしてコンテナサイズ?」って事は「船で運び、コンテナトレーラーでどこにでも、世界中運べるってことね」(その通りです)。
それー、なんかすごくね。(いや、すごいんです)
そのフレームはラーメン構造(剛構造)のフレームでした。しかも「ちょうどいい具合に」梁はH鋼材で、しかも適切なところに「ガセットプレート」がついています。なんとボルトの穴も開けてあります。壁を取り付けようと思ったら、受け材のアングルも付いています。そのコンテナの中には「パーツカタログ(夢のお手伝い)」という冊子が入っていました。

面倒な人は「これを頼めばいいんだ」。でも俺は地元の間伐材を使って「壁」や「間仕切」を付けよう。地産地消だぜ!でも一台じゃちょっと小さいなあ。

もう一台連結すればいいんだ。もう一台でも二台でも三台でも繋げられるんだ!スッゲーじゃん。(そうですすごいんです)現代コンテナ建築研究所というところが作っているのか。これいいなあ。「連結するにはこの連結パーツ」を使えばいいんだな。簡単じゃん。

ポールヘニング・エルステッド・ペデルセン君は10ヶ国語で書いてあるマニュアルをスワヒリ語で読み下し、あっという間にこの建築システムを理解し、アフリカで現代コンテナ建築研究所の代理店兼、施工代理店を始めました。パーツはある程度の量がないと送ってくれないのが玉にきずですが、瞬殺で売れていくのでそれなりの量を毎月買うようになりました。そうしてポールヘニング・エルステッド・ペデルセン商会は瞬く間に「従業員1000人のアフリカでは大手の工務店」になってしまいました。そこから供給されるコンテナシステム建築のおかげで、ポールヘニング・エルステッド・ペデルセン商会で家を建てた人々は1年間で3000家族(いや、それは実際はムリ)になりました。

なぜなら「美しくて、強くて、簡単で、安い」からです。日本の建築基準法は「地震」があるがゆえにとても厳しい基準ですが、地震のない国なので、メンバーもライトで軽く、値段も安く、セルフヘルプでも建築できるので、とてもリーズナブルに憧れの家を手に入れられ、安心安全な暮らしができるだけでなく、この建設による人々の仕事も増えました。

そんな訳で、アフリカではコンテナ建築の事を「幸せの象徴」と呼びます。

とまあ、そんな事がしたいわけよ。夢は叶うよ。願えばね。そして実行さ。それが、冒頭に申し上げた「コンテナ建築を熱心に推進する本当の理由」なのです。
「世界に広がったロジスティクス網の上にある建築システム」なのです。そんな建築システムは他にどこにもありません。しかも建築のために作ったネットワークではなく「物流」のために作られた20世紀最大の発明「コンテナワールド」を、特にコストをかけるわけでもなく使わせていただいて広げていこうと言う事なのです。

でもね、こきたないコンテナ建築や、恥ずかしいデザインをやっていてはコンテナ建築は広がり始めません。それゆえ「デザインオリエンテッド」な作品を作る事に専念して来ました。おかげで、後を追いかける会社もたくさん出現して「コンテナ建築」は今とても増えています。私どもの仕事は増えてしまいました。上記の啓発とこの業界の正しい進展に力を入れると言う事です。

「おっしゃれーなコンテナで家を作りませんか?」なんて言いながら販売しいるようではなかなか将来に不安があります(そう、おたくの会社の事よ)。人類のために「コンテナ」を建築のオープン部品として使える世界を構築して行こうではありませんか。