ハイエンドコンテナハウス講座

ハイエンドのコンテナハウスへの進化の道はこうだった

日本のコンテナハウスの歴史を振り返りながら進化を確認してみます

かつて、「コンテナハウス」という世界が始まったのは、歴史的時間の流れの中では「海洋輸送用コンテナの改造」から始まりました。中古コンテナが「もったいない!何かに使えるよね」から始まったリユースです。「強そうな鉄の箱」ですから。「これは利用出来そうだ」と考えるのは当然でしょう。リユースは持続可能な世界を構築するためには重要な思想です。しかしながら今まで解説してきました理由で「海洋輸送用コンテナ」は建築に使う事は基本的には日本の建築基準法の元では難しいと考えられるのです。

「中古コンテナ利用の歴史」は、一方で「セルフビルド」や「ちょっとした改造止まり」の結果しか生みませんでした。「建築業者」などが一つのオープン部品として、建築に本格的な利用をするといったレベルに繋がるものではありませんでした。結果的に、日本では「なんちゃって建築」以上のものになる事はなく、「デザイン性」や「使い勝手のいいもの」になったり、などの本格的成長はしませんでした。

日本ではその後、大きな変化が訪れます。

コンテナストレージという事業の中で「株式会社デベロップ」がコンテナの利用を始めました。時代的にもコンプライアンスが声高に叫ばれるようになり、海洋輸送用コンテナではなく、建築基準法をクリアするコンテナを最初に開発したのが「株式会社デベロップ」でした。つまり日本のコンテナ建築の本格的採用は「株式会社デベロップ」が開発した「ラーメン構造型」から始まったのです。これによって「建築向けラーメン構造型コンテナ」が誕生したのです。

コンテナの歴史を変えた「D社の作ったコンテナで複合型を設計したS社の作品」パルシステム

ラーメン構造型コンテナは時代とともに次第にその内容を高め現在に至っていますが、この開発の中で本格的な建築利用が始まりました。ニーズが高まると、展開される世界も広がって行きます。その動きの中で次第に「コンテナハウスのデザイン性」が高まって行きました。

最初は、世の中に実は存在する「コンテナファン」によって「コンテナで家を作りたい」「コンテナでショップを作りたい」というニーズがあり、「コンテナでこんな建物が出来ました!」といった驚きや、一般建築に負けないデザインに仕立てられる事によって、人々の目が新たな「素材」として「コンテナ」に向かったという事なのです。

ポイントは「建築基準法をクリアする事が出来るコンテナが開発された」この部分なのです。これによって建築としての「コンテナハウス」の世界が大きく広がったのです。

ただし、「建築基準法をクリアする事が出来るコンテナを作る事」には、製造環境の認証や、製作する職人の認証、コンテナを作る鉄骨材料の認証など、実は多くのハードルがあります。それを最初にクリアしたのが「株式会社デベロップ」でした。他は当社を含めていく社もないと言えるでしょう。

雨後の筍のようにコンテナハウスの世界に参入している会社が増えました。「ビジネスとして成り立つ」と考えたのでしょう。でもさすがにそんな甘いものでもありません。利用なさる方々も、ちゃんとした建築物なのですから、上記の事柄に気をつけて、しっかりとした設計思想のもとに作られねばなりません。確認を怠らないようにしましょう。

コンテナハウスの開発は今でもまだ止まりません。その規格サイズから「モジュラー建築」という考え方での成長路線は変わらず進んでいますが、逆に「モジュールの束縛から脱する」という試みも進みました。それが「在来工法の鉄骨やその他工法とのハイブリッド」で「モジュール」の概念を飛び出そうという考え方でした。これが「ハイブリッド工法」の登場です。

木造とのハイブリッドの「ワイナリー」
鉄骨とのハイブリッド

さらに進化は続きます。ハイブリッド工法でもあり、コンテナのもともとの利用方法である「輸送」の機能に回帰して、作り上げる建築物の全てのパーツとしての材料を自らのコンテナに格納できるサイズで設計し、コンテナの中にそれらのパーツを格納して建設地まで運び、その鋼材を展開して、コンテナの面積の数倍の面積の建築物を作り上げる「パッケージディール方式」という方法が現在の複層的に組み合わされた最新の方法です。もちろんコスト面と輸送性の両面、デザイン的にも変化が加えられるという事で考えられた方法です。

パッケージディール型建築。工場での仮組み写真。コンテナ2台で4.5台分の面積を作る。運んでくるときはコンテナ2台だけだ。

その時の時代の要請によって、いくつかの工法が開発され、コンテナ自身も構造的に進化し、デザイン性も広がりました。コンテナハウスは今や「建築」の世界では「選択可能な建築方法の一つ」となり得たという事が出来るでしょう。

進化は止まっていません。「コンテナの縦使いプロポーション」「横使いプロポーション」「アタッチメントを使った自由なサイズ」「重耐塩仕様の亜鉛メッキ仕様」「ハーフハイトコンテナ」「斜めカットコンテナ」「コンテナのプール利用」コンテナそのものだけでも色々な使い方、展開が増えています。

ロジスティックスは世界へ繋がっています「ジャパンメイドのコンテナハウス」は世界市場にも飛び出して行こうとしています。そのロジスティック力から「離島建築」の有効な手段としても使われています。プラント型のものも数多く出来ています。

コンテナハウスは黎明期を脱し、次のステージに入って行きました。今後もその進化は止まらないでしょう。その象徴がハイブリッド工法・イクステンション工法とパッケージディール方式という「ハイエンドコンテナ」の世界という事が出来ます。

コンテナと在来工法の「鉄骨造」を組み合わせる「ハイブリッド工法」
コンテナと在来工法の「鉄骨造」を組み合わせる「ハイブリッド工法」
コンテナと在来工法の「鉄骨造」を組み合わせる「ハイブリッド工法」

次のステージの始まり

望んだ道ではなかったですが「新たな時代」が始まりました。with/after_CORONA時代です。

わたくしたちは以前の世界には戻れない不可逆の道を歩かねばならないようです。しかし、その事を憂いても仕方ありません。事実は進行しています。「新たな時代の生活習慣」そして「新たな時代の常識」を組み立てつつ歩かねばなりません。

それなりに熟慮して今ある情報の中から「積極的な意思の中で明日」を描いてみました。私どもの業界「建築業界」や「建築の関わる世界」のジャンルです。落ち着いたらまた整理してみたいと思います。