ティーチングとコーチング_そしてコンテナハウス

ウチの設計事務所としての趣旨は「ティーチング(教え)」ではなく、あなたの横でエールを送る伴走者としての「コーチング」だ。所員の能力を信じ、引き出し、クライアントを成功へ導くためのコーチングをするのが理想だ。ティーチングからは個性豊かなものが消えていくきらいがあると考えている。新たな知識で置き換えようとするからだ。そうではなく所員が元から持っているチカラを引き出し、それをプロフェッショナルのレベルへ持っていくには「コーチングメソッド」のほうが適していると考える。

あなたの頭にある「私の建築」その映像は大切にしたい。そのカタチはきっとあなたの個性を反映したプロトタイプだ。そのまま建築にすべてを反映させることはきっと不可能でしょうが、大事にすべきあなたの個性そのものだと考える。「建築をデザインをする」時、自分の頭の中に造り上げる建築のイメージを思い浮かべる。その時の頭の中の建築のイメージを「ファーストイメージ」と呼びましょう。あなたは、まだその思いを現実のものとしようと、動き出したところですから、知識や経験に欠け、明確な建築の内容までは出来ていないでしょう。しかし、今頭にあるあなたの建築イメージは、あなたそのものの個性を反映したものであることが多いのだ。巨大組織事務所ではなく少人数の精鋭建築事務所はその個性を大事にしたい。それが存在の価値だと思っている。

私はあなた方に多くの知識やエールを送り続けます。そうすると、あなたは次第に力を付けていきますが、新たな知識や知恵が付いていく度に、あなたが初めに持っていた個性とも言うべきファーストイメージが薄らいでいったり、消えていくことがあるのです。人は成長しますから、ある意味それはそれでいいという一面もあります。しかし、建築は人々に受け入れられる個性が大事な部分も大きいのです。そんな意味では初めに抱いたあなたの建築のイメージはあなたの個性そのものです。それを残しつつ、人々に受け入れられる建築の計画を進めていくのです。

あなたのイメージにある例えばその商業施設は一体どんな機能を求め、どんな利用者が訪れ、あなたはどのような空間を提供し、どのような運営者がその空間を運営しているのでしょう。そんな細かな所まではイメージできていないかも知れませんが、そのイメージの延長を想像していきなさい。私はあなたの中にある「建築」のイメージを取り出し、どこかの場所で、なにがしかのカタチを与え、あなたが描いた建築の竣工を迎え、その建築が繁栄をするための様々な事業戦略と空間戦術を考え出すお手伝いをしなければなりません。

まるで自分に言い聞かせるようなこのつぶやきは、所員に向かうものでもあり、クライアントに向かうものでもある。

たまたま、今のテーマは「コンテナ型ユニット」を使った建築に挑み続けているけれど、それが不適切なケースの場合、わたくしたちは自由だ。RCでも木造でも、鉄骨造でも、適正を考えて建築を創り出していく能力は普通に持っている。その時は最も最適化したソリューションをお届けします。

例えば人気の飲食店があったとしよう。そこの圧倒的人気メニューは「スズキのアクアパッツァ」で、圧倒的な美味しさを持っているとしたならば、きっとその店の「バーニァカウダ」も美味しい。一方で、他の店に入り「どのメニューがおすすめですか?」「どの料理が美味しいですか?」とたずねた時。「どの料理も美味しいですよ」と答える店の料理はどれもいまいちだ(爆)。

当社の自慢は「コンテナハウス」です。誰も近づけない日本最高峰の技術とデザイン力とシステムでお応えします。でもそれが不適切な場合、他の工法でも最高のソリューションをお出しします。その能力は普通に持っていなければ、コンテナ建築でもその能力は発揮出来ません。

あ、別の話になっちゃった。
私どもの事務所は「コーチングメソッド」によって個々の個性を大事にしながら全体のレベルアップを目指しています。

写真は当社のスタッフ作 「鯛と新鮮野菜のカルパッチョ」(爆)
料理も建築だ。

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わずか一小節の不協和音とコンテナハウス


音楽で例えれば、古字利島のコンテナハウスは「ROCK」だ。シンフォニーとして計画したプロジェクトもある。ポップな小品とした作品もあれば、演歌を歌っちゃった作品もある(爆)。

作品の中にはどうしてもクライアントの趣旨を理解出来ずに「ノイズ」が入ってしまうものがある。人と人とのコミュニケーションの中での事故とも言えるだろう。そのような部分が発生しないように出来るだけ先入観を持たずに人に接するようにしたいが、なかなかそれも難しい事だ。その不協和音が致命的なものでない限り、ある意味人間としてのお付き合いを正直に表しているようにも見える。考えてもご覧なさい、人と人との関係なんて「誤解の上に成り立っている」ようなものだ。誤解を恐れずに言うならば、だからこそ人間関係は比較的スムースに流れる部分もある。

オトコとオンナの間も似たようなものだ。生物として別種のイキモノなのだから、埋まらないミゾが存在する。オトコはああ考え、オンナはこう考える。その方向は一定ではなく個体差も存在する。生物学的な奇跡の営みの中でオトコとオンナは寄り添い又あるときは反目し棲息して行く。しかしながら、大きな流れの中では概ねともに歌いながら生きて行く。ありえないことが普通に流れて行く。

映画のフラッシュバックシーンのように建築の中に埋め込まれた「不協和音」は、実は「コミュニケーション芸術」的要素でもある。その不協和音があるからこそ他の「コード」が引き立ち、「モード」を形成し、その不協和音が結節点となって「ノード」を形成する。その時全体が一つの意思を持った空間となり人の心に響く。これが空間の成り立ちだ。

写真は「練習中の第一楽章」_タウンハウスの習作

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趣味人ではなくプロとしてのコンテナハウス

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プロとしてコンテナハウスを供給して行くという事は「業としている」という事であり、コンプライアンスを初め、社会的責任を全うしながらモノを造るという事である。その事はなかなか難しいのであるが、それをこなさねばならない。趣味としてやれるレベルではない。マクロでは海の向こうとのロジスティクスを考え、ミクロではmm単位で構造体を把握し、その総合体としての空間を造り上げる。

コンテナで「ホテル」を造ったり、「寄宿舎」を造ったり人の考えなかった事に挑戦して参りましたが、今までノウハウだけ提供し挙げ句の果てはそれを盗まれて「ホテル」を勝手に造られたり、世の中なかなか火事場泥棒のような方もおられて肝を冷やしたりといろいろ経験させられております(汗)。世には本当にそういう事をして気にならない方もおられるという事実の方に驚いてしまいます。ちなみにK開発という会社です(爆)。

そんな中、新たな取り組みがだいたい纏まってきた。少なくともこれはまだ誰もやっていない。コンテナハウスによる「タウンハウス計画」だ。この計画とモジュールのマッチングは抜群だが、そのディティールは難題の連続だ。しかしそれを乗り越えて行く。いや、当然だが建築家達はそれが楽しくて生きている。

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面白い取り組みも忘れない。
アーティスティックな建築も作る。

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中国旅順の映画村(関東民俗文化村)とコンテナハウス

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中国は大連から小一時間で「旅順」に行ける。日本にもなじみの深い町だ。そこに「映画村」がある。ある仕事でこの映画村の経営者とお知り合いになった。どうしても案内したいというので見せて頂いた。思いの外なかなかのスケールで、昭和初期の中国の様子を再現した映画村で実際にそのような時代の映画やテレビドラマなどの撮影場所として使われ、観光用にも有料で入場出来る。

この映画村のアートディレクターも同行していただいたので逐一説明していただけた。運営する組織が中国文化の研究もしているような組織なので、この経営者も文化的な歴史や政治史にもお詳しく、かつての日本との関係なども話してくれた。歴史考証や建築物のチェックなどもちゃんとなさっているらしく、なかなか古めかしくしかもちゃんとしている。

中国の典型的民家である「四合院」的な民家も再現してあった。建築の勉強しているあなたも聞いた事あるでしょう。

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この映画村に「撮影クルー」を引き連れて「撮影隊」や「タレント」がしばしばやってくるらしい。しかしながら「適当な宿泊施設」が近くにないらしい。なかなか時間的に予定通り動かない「撮影」では、宿泊施設が近くに欲しいという。

そこでこの経営者は近くの使える土地に「コンテナハウス」のホテルを作って欲しいという。

モジュール分割とレッドブルのコンテナハウス

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コンテナハウスの根底をなすシステムはその「モジュール」としての概念だ。世界標準を準備した背景は「チェーンロジスティクス」という目標だった。「チェーン」はそのまま鎖のように繋がって、「切れる事なく運んで行けるシステム」という事だ。事実それは世界中に広がり、地球上をくまなく運ぶ「チェーンロジスティクス」が確立された。世界標準がこれまで広がった例があるだろうか。

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このチェーンロジスティクスを実現する為に必ず守らねばならない事はその「モジュールサイズ」だ。このモジュールと緊結方法の標準を守っていれば「船積み運賃」さえ破格にローコストだ。バラ積み船などに比べれば、決まったサイズの箱状だから沢山効率的に積める。皆が利用するから、定期船も多い、いい事尽くめで輸送費は下がる。ちなみにこのコンテナをバラ積み船に積めばヘタをすると10倍程度の輸送費になる。

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さて、写真のコンテナは「REDBULL」様にご発注いただいた「DJ_booth」のためのコンテナだ。ブース自体は20FEETのサイズも要らないほどの小さなサイズ。当社ではどのようなサイズのものでも製作は可能だ。それゆえご要望通りのサイズで製作したが、2Mほど20FEETコンテナにはサイズが足りない。このまま運ぶと20FEETコンテナを運ぶよりももっと輸送費がかかってしまうという、モジュールシステムならではのパラドックスが発生する。

設置する場所の特性に合わせて、残りのサイズで「階段」を作り、「連結して20FEET」にし、20FEETコンテナとして輸送を行った。設置現場で分解し、上部の写真のように「本体」と「階段」としてそれぞれ設置し、無駄もなく、輸送費も20FEETコンテナそのままで実現した。

高偏差値読者の中にはこれで「ピン」とひらめくものがあるでしょう。そう「40FEETコンテナ」にもその考え方は適用出来る。「30FEET+10FEETコンテナ」などの組み合わせを考えれば、ある意味「モジュールサイズからの呪縛」を解く事も出来るのだ。これが一つの「コンタクトデザイン」。あらゆる手法がそろってきた現代コンテナ建築研究所のコンテナハウス。自由度においても私どもを縛るものはない。モジュールという世界が生み出す利点のみを拡大させ、あらゆる建築を自由に造り出して行きたい。

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新たなコンセプトでコンテナハウス

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コンセプト的にはもう数年前から考え始めていた方向性だが、実現出来る案件が出始めた。それはまだ秘密だけど(爆笑)。
すでに書いてるし、その習作過程を少し模型で紹介。
NEXT_HIT作の予感がする。(爆笑)

界隈性の卓越化(ディスタンクシオン)によるタウンハウス_コンテナハウス

卓越化(ディスタンクシオン)

すべての人間は、自分に先んじて存在する社会の中に生まれ出て、その社会の規範にしたがって社会化される。しかし、もしこのプロセスが完全であればわれわれは単に社会を機械的に再生産することになり、歴史は動かないことになる。われわれは社会に同化しながらも他者との差異を保つことによって自己同一性を保とうとする。この他者から自分を区別してきわだたせることを卓越化と呼び、これが階級分化と既成階級構造の維持の基本原理となる。

distinction(ディスタンクシオン) なるものが実は差異であり、隔たりであり、弁別的特徴であり、要するに、他の諸特性との関係においてしか、またそうした関係においてしか存在しないような、関係的特性にほかならないということを示すために選ばれたものなのです。

卓越化は、いわばデリダの差延(diff*rance)のように、空間的な差異のみならず、時間の軸に沿った差異をも誘導し、差異の時空間を構成する。しかも差異と差異の間にも微分的に分節化された差異をも生み出す。

フランスの社会学者 ピエールブルデューのいう「卓越化」の概念である。

人々が心地よく社会の中で生活し、建築空間の中で過ごすとき、実はこの概念は建築をデザインするものにとって非常に重要な概念となる。差別化ではなく卓越化。

タウンハウスとコンテナハウス

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写真はタウンハウスやテラスハウスの原型_デタッチドハウス イギリスの典型的都市型住宅様式である

現在の取り組みテーマは「低層集合住宅」。その中でも「タウンハウス」とか「テラスハウス」と呼ばれるジャンルに取り組み始めた。建築基準法上は「長屋」と呼ばれる。ちょっと前時代的なこのネーミング。それぞれの家屋へのアプローチが、共用の廊下などからではなく、独立しているアプローチを持っていることが要件だ。このテーマはかねてより取り組みたかったテーマだ。都市の周りを形成する居住地域は低層の建物が主流となる。都心ほど高度に土地を使わず、適度な空地とライズを押さえた構成で快適な住環境を保護する事も目的だ。

分断されてしまった土地を集約する事は超積極的なフォース(基本、ディベロッパーなどの開発)などがなされない限り難しくなって行く。比較的緩い使い方のサバーブスでもそれなりのまとまりがあれば「低層集合住宅」などで住環境やコミュニティースペースを確保した豊かな住環境が作れるのだが、第一種低層住居専用地域などになると、区分された所有土地同士の間にも「外壁後退」などの規制によって中途半端な無駄な空間に敷地が取られ、いよいよ狭小な住宅になるなどという、本来の目的と違う方向に規制力がかかる事になったりすることもある。タウンハウスの具体的な利点はその無駄な空間を省く事が出来る事などもその一つという事が出来るだろう。

今そこにある危機、とコンテナハウス

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なかなか秀逸な邦訳でありましたこの映画のタイトル。原文は「CLEAR AND PRESENT DANGER」直訳は、「明白かつ現在の危機」となる。

コンテナの世界で明白でかつ今そこにある危機は、東北の震災にかこつけて「粗悪なコンテナハウスが横行している」ことだ。緊急な事態だから「建築基準法」のことは少々甘く考えてもいいのではないか、あるいは、とにかく早く必要なものを届ける事の方が先決なのではないか・・・・・。などと法を無視した考え方が蔓延している。いいのか。

この問題はそう遠からず、大きな問題として顕在化し社会的な問題になる。なぜなら、かつて「コンテナ倉庫」で問題になり、その事を国土交通省も明確に文章にし、はっきりとした方向を打ち出した経緯があるからだ。その決断には理由があった。そのまま放置する訳にはいかないからこの決断がなされたのに、このまま放っておけば、やがて同じ問題が生まれてくる。災害も余震的であっても大きな地震が再来した時に、ダメージを受けるコンテナハウスが出てくるだろう。

一方、国土交通省は、米国の圧力で「コンテナ」をサーバールームとして使う「コンテナ型データセンター」に関しては、「容器」という考え方を取る事によって「コンテナデータセンター」は「建築ではなく容器」との考え方を出した。それによってISO輸送用コンテナは「コンテナ型データセンター」として使えるようになったが、実際の所、使用上は様々な装備の搭載に大きく加工が必要なので、ISO輸送用コンテナを改造して使う事は非現実的で実際に使われているケースはあまりない。この場合、実質的にも「窓を明けたり」はしないから強度にも大きな問題は生じない。

「コンテナハウス」の場合、居住性を高める為に「開口部」を沢山取ることになる。これが素人に取ってまずい事なのだ。ISOコンテナはそのまま使えば充分な強度を持っているが使えない理由は別の所にある。しかも「その強度は閉ざされた窓のない壁」によって作り出されたものであるから、開口部を無造作に明けるという事が命取りになるのだ。急激に強度を失い「危険な箱」となる。最悪でもまともな「建築士」であればその事に気づき補強などを入れるだろうが、「なんとなくオレ知ってるもん」という方々が考えるコンテナハウスはそれはそれは恐ろしい(爆)。

そのような影響を受けない「剛構造」のコンテナを作る道を知っている人間がその辺にいる訳も無く、建築家たちが好んでテーマにする事も少なく、野放図にされ「既にそこにある箱」だから素人には利用しやすいコンテナは、格好の改造素材にされ、コンテナハウスの将来に危機を作り出している事を危惧しているのは私どもだけかも知れない。なぜなら「WEB」に掲載されている「コンテナハウス」の数は震災後急激に増え、多くのなんちゃって建築?法人がそれに取り組んでいる様子が見えるからだ。そしてそのHPの中に無断で当社の写真が使ってあったりする。ワオ!そんなことしてまでやって行きたいのか・・・・。そのように誠に遺憾な状況を呈している。面白すぎ、を通り越して来たので、「いまそこにある危機」に対して、チクッたりする趣味はないけれど(爆笑)、とりあえず純粋にその危険に対して、あなた方を仲間ともライバルとも、同業者とも思った事はないけど、遵法に反する、軽い考え方と、事実危険な事はやめた方がいいのではないかという警鐘を発しておきたい。

フツーから超過激まで、コンテナハウス。

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表現の自由はどの場で行おうとそれも自由だ。
住宅は基本の機能は「安全に明日の英気を養う場所」と考えるのはわりと普通であろうから、そう考えた場合、出来るだけフツーのデザインでいいのだろう。

ただ人生はそれぞれの人間の特有のものなので、様々な多様な生き方がある。それゆえ、非日常的な空間を好まれる方も存在し、その事は別にその方の人生なのでとやかく言う筋合いではないし、逆にそのような方が廻りの方にいい影響を与える事もある。

わたくしども建築家は言うなれば「オトコ芸者」(爆)のようなもので、お座敷がかかれば飛んで行ってクライアントのご要望を満たす為にプロフェッションを発揮するのが仕事である(爆)。そのとき反社会的な事を望まれれば、それはお断りしなくてはならないが、そうではない自由な表現の発露に関しては、お手伝いするのが我々としてもプロとして喜ばしい事である。

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なので、フツーの家から超過激なものまでコンテナハウス何でもご相談にのります。ただ一般的に言って、フツーからはなれれば離れる程コスト的にはアップして行く事が多いのは否めないという感じです。
写真の家は、建築には一般程度のコストですが、調度品に関してはご自分のセレクトによるものなので、価格は存じ上げません。しかしながら世界中からコレクションされていた事実は存じ上げていますので、相当熱心に探さねば、それもある一定のキーワードで各階揃えていらっしゃるので、モノのカタチとその性質を見抜くチカラに長けたクライアントであることは事実です。

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